
校舎の裏に回ると、町長は高鳴る胸を押えながら、辺りの様子をうかがった。
小さな畑のある場所に、いくつもの白い光が浮かんでいる。
月のライン。
夜に光る、花びらのライン。
町長は静かに歩み寄ると、花々の間で横たわる人影に、目が行った。
左手に、今、摘んだばかりの花を。右手は人差し指を立て、空を指している。
影はその指で何度も、何度も、何かを切るような仕草を見せる。
町長はその病状に、思い当たることがあった。
ラインを切っているのだ、と確信した。
町長は近寄ってその身を起こさせ、腕に強く抱きしめた。
ロイ、もういい。どうか許してくれ。
町長の口から、声にならない嗚咽がこぼれた。
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