2017
12.19

月のライン 6-5

Category: 小説


 次の日、フラワーショップ・ナヤの前に、たくさんのスーツの男がやってきた。

 観光客が、彼らを横目に過ぎてゆく。

 しかし誰の目にも、その騒ぎの真相は分からなかった。

 ただひとり、店の前の噴水近くから、そちらを見ていた少年以外は。

 少年はただ黙って、不審な男たちの行動を遠目に見ていた。

 店の写真を撮ってゆく者、花を押収する者、みな静かだったが、迅速に、それぞれの仕事をこなしている様子が見えた。

 少年は噴水のふちに腰を下ろした。

 背後に、水しぶきの音。ずっと前方からは、海の波音が聞こえてくる。

 潮風に吹かれて、雲の流れが速くなる。

 あっという間に日が沈み、空に冬の星座が昇る。

 雲に隠れた月が、その隙間から町を見ている。

 男たちが引き揚げるのを確認してから、少年はゆっくりと腰を上げた。

 群衆の中に、少年が待っていた男の姿は、見られなかった。

 店の中から、線の細い女性が出てきて、少年を手招く。

 駆け出す少年の足取りは軽やかだった。

 明るく微笑む女性の顔に、何の問題もないことが表れていたから。



● NEXT → 月のライン 7-1






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