2017
12.17

月のライン 4-2

Category: 小説


ロイは昼前にフェリーに乗って島へ上陸した。

海沿いのフラワーショップ・ナヤを通り過ぎ、目的地へ足早に向かう。

冷たい潮風がコートの裾をひるがえした。

リボンの装飾が浮き彫りにされた看板の、小さなお店。

ショーウィンドーに飾られた華やかなツリーに見向きもせず、ロイは入口ドアを開けた。

「いらっしゃーい」

陽気な出迎えの声がした。

店の店長がひとり、レジの前に立っている。

男なのに女物のエプロンを巻いて、顔にも強い化粧をしている。

長いまつ毛を付けた目が、ロイを品定めするかのように、じっとりと動いた。

「リカはいますか」

ロイが聞くと、店長は両手をパチンと叩いて、低い声でまくしたてた。

「ロイじゃないの! 島には帰ってきていたの?
 リカを心配させるんじゃないわよ。電話にも出てくれないって、スネてたわよ」

この島には珍しいニューハーフの店長。2階で一緒にリカを住まわせているというが、
男にしか興味のない男なので、ロイはだいぶ安心していた。

「リカはいますか」

ロイはもう一度、同じセリフを突きつけた。

店長は片手をあごにかけ、微笑んだ。

「教会前の広場にいるわ。カートを出して、店番してもらってるの」

「ありがとう」

簡単にお礼を言って、ロイは店を出ようとしたが、ふいに立ち止まり、店長を振り返った。

「先日のアクアアルタは、手伝いに来れなくてすいません」

いいのよ、という感じで、店長は笑いながら、片手をロイに振ってみせた。



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