2017
12.15

月のライン 2-2

Category: 小説


ルームサービスのクロワッサンとミルクを胃に収めたあと、メルはチェックアウトした。

ロビーの柱時計は7時を刻んでいる。

9時入港だから、しばらくまだ時間があるな。

よく磨き上げられた、つややかな木の入口ドアを開くと、
すぐ外に、掃除をしている2人組を見た。

短く伸びたホテルへ続く階段の、白い手すりを雑巾がけしている、背の高い男。

柄の長いモップで、石畳の水を拭き取っていた、細身の少年。

2人はメルを通すために、階段の両脇によけ、立った。

「良い1日を!」

少年の透き通った声がメルを見送る。通り過ぎた後ろから、囁くような会話が聞こえた。

「ほら、彼が昨日、ラジの言っていた……」「かわいい長靴じゃないですか」

歩きながら、メルは町の様子を眺めた。

まだフェリーが来ていないので、観光客の姿は少ない。

今、写真を撮っている彼らは、昨日からの泊まり込みの客だろう。

ひと晩水に沈んで、今朝早くに浮上した町は、雨上がりの様子に似ていた。

所々へこんだ石畳に、水溜りができ、青い空を映し込む。

観光客は彼らの言葉で喋り合いながら、その光景を写真に収めて、楽しんでいるようだった。

メルはミリのパン屋が建つ通りを抜けた。

足を休めず眺めると、ドアにはCLOSED(閉店)と書かれた札が下げられていたが、
もう表には机と椅子が持ち運ばれて、テーブルクロスもセットされていた。

この様子なら、ブランチには客を呼び込めるだろう。

そのまま路地を歩き続け、メルは役場前の広場に着いた。

人通りはまばらだったが、バックパックを背負った旅行者が2、3人、
役場前に立つ案内板を眺めていた。

遠目に確認してみると、その看板から雫が地面に落ちていた。

上の方は乾いていたので、昨日、どれくらい浸水したのかは、分からなかったが。

メルはポストに近寄って、ポケットからカギを取り出し、裏蓋を開けた。

10通ほど新たに投函されている。

全てを鞄に詰めたあと、役場の時計を見る。

7時半。



● NEXT → 月のライン 2-3






このエントリーをはてなブックマークに追加 follow us in feedly


にほんブログ村 小説ブログへ
関連記事


ポイントでお小遣い稼ぎ|ポイントタウン


トラックバックURL
http://riemiblog.blog.fc2.com/tb.php/49-9d3ab0bf
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top