2017
12.07

なぞの声

Category: 小説


新人の宇宙警察官は、一台の宇宙船に乗って宇宙をパトロール中だった。

彼はまだ新人なので、早く手柄を取りたいと常々思っていた。

近々昇級試験があると聞いていたが、いつのことになるかまだ極秘だった。

だから日頃から手を抜かずに訓練しておかなければならない。

今日も自ら宇宙船に乗り込んで、危険な異物などないかパトロールに精を出していたのだ。



宇宙には、地球から出た様々なゴミが漂っている。

衛星を打ち上げた時の残骸が、主な宇宙ゴミとして漂っていた。

大抵は細かく、地球に降ってきても、大気圏で燃え尽きるのだが、大きな残骸や、熱に強い部品などは定期的に見回って宇宙警察官が回収しなくてはいけない。

専門にゴミを集める作業員もいるのだが、危険が伴う仕事なので、その人数は徐々に下降ぎみだった。


今日は目に留まる危険物はないな……そう思っていた時、新人警官の耳に聞きなれない声がした。

「た……助けてくれ……」

えっ、と思って声のした方を向くと、宇宙船の無線機だ。

どこか、近くから電波を受信したらしい。

彼はすぐ無線を手に取り、警官らしく応答しだした。

「こちら、宇宙警察です。どこに居るのか分かりますか? 怪我はありませんか?」

しかし無線からは、「助けて……」と今にも死にそうな声しか返ってこない。


彼は不安になりながら宇宙船を操作した。

近くを行ったり来たりしてみるも、誰の姿も見当たらない。

側には宇宙飛行士もいないし宇宙船もない。

電波の発信源が分からないまま、彼は地球の本部に連絡を入れた。

「もしもし。近くで助けを求める声を聞いたが、誰も居ない様子です」

本部でも色々調べてみたが、この近くには誰もおらず、また、そんな無線が入るわけはないだろう、と返事が返ってきた。


が、彼は諦めなかった。

熱心に近くを飛び回り、救助を求める人を探した。

しかし結局そんな者はおらず、ついに電波も消えてしまった。

そんなわけで、彼は地球に帰還した。



本部に帰ってからというもの、無線のことが気がかりでならない。

上司にも相談してみたが、「まぁ、夢でも見てたんじゃないのか?」と言われ、言い返す言葉もなかった。


同僚からは、宇宙に漂う幽霊の話を聞かされた。

それは姿も見せずに近づいて、電波を使って声を出し、会話した相手を呪うという。

そんなオカルト話など信じない彼だったが、日が経つにつれ、より聞いた声の印象が強くなってくる。


あの声音。

苦しそうな息遣い。


彼は忘れられない怖さで、一時は本当に「こんな仕事をこの先やっていけるだろうか……」と一人悩みに悩んだ。

真っ黒な宇宙空間。

吸い込まれそうな闇。

どこまで行っても果てのない場所。

それに、いつ宇宙ゴミが追突して船が撃破してしまうかわからない。

宇宙警察官というのは、まさに死と隣り合わせなのだった。



数日後、彼はある人物と、衝撃的な出会いをする。

「こんにちは! 宇宙ゴミ収集作業員ですが、署長はおられますか?」

その人は、宇宙ゴミを回収する数少ない作業員だった。

ゴミのことで署長を訪ねて本部に来ていた。

彼はその声を後ろで聞いた。

同僚と話す作業員のやり取りの声を、彼はしばらく聞いていた。

そして、「署長はあちらの署長室におられますよ」と、同僚に言われた作業員の後を追って、こう言った。

「僕がご案内致します」



彼は作業員と署長室に入ると、デスクに就く署長に向かってはっきりと言った。

「署長、以前、宇宙で聞いた声はこの人です。どういうことか、説明してください」

「ああ、きみか」

と、署長は席を立って彼に言った。

「よく気づいたね。実はきみをテストしていたんだよ」

署長は作業員の横に立ち、二人が組んでいたことを教えた。

「あの時の電波は、この作業員に喋ってくれと頼んだのだ。そしてその後、きみがどういった行動に出るか、社内極秘で試験していたところなのだよ。驚いただろう、これがうちの昇級試験だ。プロの宇宙警官に必要なもの、それをきみは持っていたのだ」


署長は彼に、その詳細を教えてくれた。

パトロール中に見えない者の声を聞いても、慌てない行動。

そしてそれを捜索する粘り強さ。

周りの仲間に冷やかされたり、呪いだと恐怖を与えられても、決してめげない冷静さ。

さらに、声の主を当てるといった洞察力。

「おめでとう。これからも頑張ってくれよ」

署長はにっこり微笑んだ。

横に居た作業員は署長に、「では次は、どの新人さんにテストしましょうか」と、打ち合わせの話を始めた。

「ご協力しますとも。宇宙ゴミを集めるプロが、もっと宇宙に必要なのですからね」



◆ E N D






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コメント
お疲れ様です。

星新一氏の作品を思い出します。
この妖怪めの文章造りの
お手本にさせて頂きます。
美味しい処は無断借用するかも知れませんが
大目に見て頂ければ幸いです。

寒いのでご自愛下さいませ。
butaneko dot 編集
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