2017
12.05

天国と地獄の狭間で

Category: 小説


ここは天国と地獄の狭間。

死んだ人間が天国へ行くか地獄へ行くか、生前の行いの善し悪しで審判人に判断されるのだ。


どうやら俺は死んだらしい。

56歳という若さで死ぬなんて、俺にはまだやり残した仕事があるというのに、病気には勝てなかったか。


俺はある大きな企業の社長で信用も厚かった。

しかしその分、多大な責任と負担がそこにはあった。

俺は皆の為に、そして家族の為に、必死で働いた。

無理をしすぎたのか、まさか過労で死ぬなんて……。



それにしても凄い行列だ。

死ぬ人間はここまで多いのか。

天国に続く門か、地獄へ続く門か、審判人に判断された門へと導かれる。

どうやら、地獄へ行く人間の方が天国へ行くことのできる人間に比べてはるかに多いようである。


俺は眠いのも休みたいのも我慢して働いたし、家族には優しい父親であり続けたのだ。

俺が地獄なんて行くはずはないであろう。

俺には絶対の自信があった。

「では、次の方」

俺の番だ。



「ふむ。あなたは……ふぅむ、そうですか。社長さんで……なるほど。あなたは地獄行きです。では次の方」

「なに!?」

お、俺が地獄行きだと……?

こんなに社会にも適応し、人間としても素晴らしい男であり続けた俺が――!?

「ちょっと待ってくれ!!」

俺は審判人に思わず叫んだ。

「どういうことなんだ!? 俺は生前誰もが認める真面目な人間だった。自分の身を削ってでも会社や家族の為に生きていたというのに、なぜ天国ではなく地獄行きなのだ! ちゃんと俺のことを見たのか? 分かるように説明してくれ!」

「死んだ人間のことは何もかも分かります。
 ただし私共が見たのはあなたではありません。
 あなたの遺伝子、つまりDNAです」

「な、何……!?」

「あなたは自分のDNAが休息などの指令を出していたのにもかかわらず、ことごとく反発して働き続けました。
 DNAによって生かされていることも忘れてしまって。
 何を誤解されているか存じませんが、人間界ではDNAが全てなのです。
 性格というものは、生まれた時から先祖から受け継がれたDNAによって形成されているのですよ。
 DNAに逆らって生きることこそ、最大の禁忌となるのです。さ、次の方!」

「そ、そんな……」


俺は地獄の門へ導かれる中、聞いた。

「ほぅ、あなたはニートだったんですか。やりたい事だけをやって……なるほど。天国行き!」



◆ E N D






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俺も似たような経験?をした。
8月初旬、朝 自宅周りをうろうろしていたら足の動きがおかしくなり自室に戻ったが
暫くすると呂律が回らなくなり、更に激しい痛みが左足から全身に回って意識が薄れる。
(人の体は良く出来ていて極限に達すると意識を無くして省エネモードに切り替える)
しかし意識がないと言うのは正確ではない。断片的ではあるが耳だけは機能している。
周りで医者、看護師たちが慌ただしく処置している会話が聞こえた。

覚醒するまでの十日、薬剤の影響なのかは定かではないが同じように例の場所で
言われたのが『お前は社会に対しての奉仕が出来ていないから出直せ』。
     『どちらにも属していないので帰れ!』

意識を回復して見舞の人たちには祝福されたが正直、全く嬉しくない。
無償と言えば色々な事が考えられるが暫く、奉仕をしようと奮闘している。
kuma dot 編集
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