2017
11.24

UFO研究家

Category: 小説


 UFO研究家の博士は、頑固な性格で有名だった。

 人々の誰もが「ありもしない」と、UFOや宇宙人の存在を否定しても、博士だけは「存在する!」と言い張っていた。


 博士は若い頃から、UFOが空から降りてきて、宇宙人が自分と握手する光景を、何度も夢に見ていた。

 宇宙人が悪者であるわけがないと、博士は思っていた。

 宇宙人は友好を築く為、いつの日か必ず地球にやってきてくれる、と信じて疑わなかった。


 博士は研究家として、何度もお茶の間にTV出演したが、その熱弁ぶりに共演者おろか、スタッフまでも大爆笑。

 もちろん世間も笑いのネタとして博士を認知していた。

 博士はめげることなく、何冊も本を出版した。

 買う者は少なく、博士の懐に大それた収入はなかった。



 博士はただっぴろい草原の真ん中に立ち、空を仰いだ。

 真昼の暑い時期だった。

 太陽の熱を受けて、じりじりと草原が揺れる。

 蒸し暑さが、博士の額に汗を浮かばせていた。

 博士はずっと待っていた。

 UFOから宇宙人が降りてきて、自分と握手する時を。

 そうして何年間も、もう何十年間も待ち望んだことだ。

 博士の真上に、一台のUFOが現れた。

 突然のことに、博士は少しは焦ったが、だが、UFOの出現は至極当然のことだ、と思いを切り替え、博士は歩いた。

 UFOの着地した元へと。



 草原の一角で、UFOからひとりの宇宙人が降り立った。

 博士の思い描いていた通りの姿だった。

 博士は、これには勝利を覚えた。

 どうだ! みんな! 私は間違ってなかったぞ!

 心の奥で、博士は叫んだ。

 そして、博士はアレをするのだ。

 そう、長年夢に見ていた、宇宙人との握手。



「やあ、こんにちは」

 と博士は言って、ひとりの宇宙人に近寄った。

「あなたをずっと待っていましたよ。もう何十年と待ち続けたのです」

 言いながら、博士は手を差し伸べた。

 すると宇宙人も、「コンニチハ」とかたことで喋り、細い手を伸ばしてきたのだ。

 が次の瞬間、握手するため近づきすぎた宇宙人の足が、博士の足に重なった。

「おいおい、足踏むなよー」

 何気なく呟いた博士の言葉に、宇宙人の体がピタッと固まった。

 そして、「コノ星モダメダッタカ……」と宇宙人が言い放った。

「ナカヨクナレルワケナイ……足フマレタグライデ、オコルトワナ……」

 言い放った直後、宇宙人はUFOへ素早く入りこんだ。

 そして、あっという間にUFOは空のかなたへ消えて行った。

 取り残された博士はひとり、握手の手を差し出したまま、呆然となった。


 じわじわと草原の地面に陽炎が揺れる。

 言いようも無い苦さや後悔の念が、博士を包み込んでいた。



 お茶の間でUFO特集を見ていた人たちは、「あの研究家はやけに優しくなったなぁ」とか、「以前に比べて頑固でなくなった」など、博士を見る目を変えていた。

 いつ見ても、博士はにこやかに笑い、共演者がちょっと肩をぶつけても、「ああ、大丈夫ですか」と相手を心配する気遣いよう。

 相変わらずUFOの存在を信じてはいるが、「今後、地球に降りてきてくれるか」との問いかけに、「NO」と答えを返す博士だった。

 それ以来、なぜかは分からないが、博士の本は売れている。



◆ E N D






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コメント
博士が踏まれたこをサッと受け流して「どうも」と握手第一でいけば良かったのか、それとも、宇宙人が「アット、ゴメンナサイネ」と言ってすぐさま「ドウモ」と握手すれば良かったのか…なんかせつないですね。
赤ポスメジロ dot 編集
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