2017
11.14

星の丘

Category: 小説


ジョンはいつもの、なだらかな道を歩いて、小高い丘へやって来ました。

今は夜。

悲しくなると、ジョンはここに来るのです。

そして、空を見上げました。

真っ暗な広い夜空に、画びょうで穴を開けたような、小さな光がありました。あっちにも、こっちにもです。

いつの日かお父さんが、あれは遠い場所にあって、決して触れない、星というものだよ、と教えてくれたことを、ジョンは思い出しました。

「星」

とジョンは呼んでみました。

しんとした世界に、ジョンの声は響いて、エコーとなりました。

「星」

もう一度言ってみると、また向こうから「星」という、小さな声が聞こえます。

ジョンは心の中で、「あれは星、星、星。あれも星、星、星」と、星を数えて遊びました。

一つ、小さな星がいちだんと大きく輝きました。

そして、こちらに向かって、するり、と降りてきたのです。


「こんばんは、ジョン」

と星が言いました。

「ぼくは星のカムパだよ。きみに会いに降りてきたよ」

「どうしてぼくのこと知ってるの?」

ジョンが尋ねると、カムパは、くすぐったそうに笑いました。そして「いつも見てたからさ」と言いました。

「ねえ、一緒に遊ばない? 夜のお空を散歩しようよ!」

ジョンは少しためらいましたが、カムパが「おいでよ」と手を差し出したので、その手につかまりました。

すると、するりするりと、ジョンはカムパと一緒に、手を繋いで、空へ、高く上っていきました。

お父さん、ぼく、星に触れたよ!

ジョンは心の中で叫びました。

ぼくもう、この手をぜったい、離さない!



夜のことでした。

丘の近所に住むおばさんが、電話に向かって喋っていました。

「あ、警察ですか? また、自殺ですよ。丘から子供が飛び降りました。ええ、見てたんです。あれは確かにジョンくんでした。最近、たった一人の身内のお父さんを亡くされていて……。私は、死んだら星になるのよ、と慰めてはいたんだけれど……」

「分かりました。すぐ向かいます。……しかし奇妙ですね。これで5人目ですよ、その丘からの飛び降り自殺は。死神でもいて、誘っているのだろうか」

電話の向こうで、警察官も首をかしげました。



その小高い丘は、夜になると、たくさんの流れ星が見えるそうです。

光につれられ、何人もの人が飛び降りてしまう、自殺の名所と呼ばれるようになったのでした。



◆ E N D



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