2017
11.07

避難用シェルター

Category: 小説


お金持ちのゴールドさんは、いざという時の為に避難用シェルターを購入しておこうと思いました。

どんな災害が起こっても、命を守れる、性能の良いものです。

そこで、シェルターや地下室など開発している会社へ直々に向かいました。



若い営業マンがスーツを着て、商品の展示室へ案内してくれました。

そこには数々の長方形のハコが置いてありました。

研究員らしき白衣の男がゴールドさんに近づいて、ハコについて教えます。

「こちらが最も最新の避難用シェルターです。
中に乗り込めば、いかなる火災でも燃えたり溶けたり致しません。
また、強盗が押し入って、たとえチェーンソーで切りつけたとしても、ご安心くださいませ。
外部の損傷は全くありません。傷ひとつつかないのです。
さらには、突然の地震で地盤沈下し、救助の届かない地中深く埋もれてしまうケースもありますよね。
そんな時の為に、これは大活躍致します」

そう言って、研究員は薄い説明書をゴールドさんに見せました。

「ほぅ! これは素晴らしい! ハコ外部側面に付けられたジェット噴射のおかげで、ハコごと浮かび上がるという機能なのだな」

ゴールドさんは気に入って、実際にハコの中へ入りました。



「中にボタンがあるでしょう? それを押している間は、ジェットで上へ行き続けます。
ハコが硬いのを利用して、積もった泥も押し上げられるというのです」

研究員は、そこでふと、沈んだふうに言いました。

「ただこれは、まだ開発途中でして、誰も使った試しがないのです。もちろん、開発実験は致しました。
火の海へ入れたり、金づちで叩きまくったり、もう何回もテスト済みです。
しかしゴールドさんが実際ご使用された時は、我が社に改良のポイントなどを教えてくださいね」

「ああ、それはそうするよ。ではちょっと、説明書を見させてくれ」

「はい、喜んで」

研究員は薄い説明書をゴールドさんに渡しました。

すると、その時です。

これまで経験したどんな地震よりも、物凄く大きな揺れがきたのです。

慌てたスーツの営業マンが、研究員にぶつかりました。

その衝撃で、研究員はハコのドアに激突しました。

ドアは、ドア付近に居たゴールドさんを押し倒して閉まりました。

押し倒されたゴールドさんは、ハコの中で倒れ込み、壁についていたボタンに頭を打ちつけ、意識を失いました。



スーツの営業マンは、地震がすぐにおさまったので、

「すみませんでした」

と言って、研究員に謝りました。

「ああ、大丈夫……」

研究員は言いましたが、はっと振り返り、そこにハコがないことに気がつきました。

上を見ると、天井に大きな穴があいていました。

遠い青空の中で、小さな影のような粒が上へ上へ、子供の手から離れた風船のように昇っているのが見えました。

ハコでした。



ゴールドさんは大気圏を離脱しました。

ぶつけた頭がボタンを押しっ放しにしていたのです。

大気圏外を漂うゴミや、破片の衝撃にも耐え抜けたのは、それが避難用シェルターだったからです。

ゴールドさんは意識を取り戻し、パニックに陥りました。

ボタンから離れたため、ハコは宇宙空間に浮遊しました。

しかし、そうとは気づかないゴールドさんは、

「止まったぞ。おお、地上に出たのか」

と言って、ほっとしました。

そして説明書をめくり、ドアの開き方を見て、その通りに致しました。

外は真っ暗闇でした。



研究員は、営業マンに言いました。

「内緒だぞ。金持ちの男が一人消えたんだ。金目当てで付け狙うやつなんていくらでもいる。消えても不思議ではない」

「はい……」

営業マンも頷きました。

また研究員はこうも言いました。

「しかしこれでようやく、改良のポイントが分かったというわけだ。私にとっては、いい出来事だったな」



◆ E N D






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