2017
12.18

月のライン 5-4

Category: 小説


 ロイは雨音で目を覚ました。

 どしゃ降りの雨を受けながら、ゆっくりと起き上がる。

 狭い路地の石畳に、大粒の水が跳ねている。

 ロイはその場で咳き込んだ。

 腕時計を見ると、2本の針はちょうど12を指していた。

 昼の12時なのだろうか。胃の辺りがものを欲しがるような、しかし何かを吐いてしまいたいような、気持ちの悪い感じがした。

 コートの前ボタンを止める。

 目がくらむ……。

 ロイは壁に両手をついた。

 月のラインを切ってしまった。

 嫌悪感と悔しさが、ロイの目に涙を流させた。

 月のゲートの向こう側が、ロイのまぶたに焼き付いている。

 キリトリ線を見た。幻想花が映したライン。

 その門をくぐると、花になった自分の姿。

 言いようもない幸福感。ひと晩の夢。

 打ち付ける雨が涙と混ざった。

 気だるい心とふらつく足で、ロイは路地を歩き出した。

 アクアアルタかと一瞬、錯覚してしまう。この水溜りを歩いていると。

 かじかんだ手をポケットに入れると、やわらかいものに片手が触れた。

 それは残りの花だった。

 食べた者に幻を見せる、月の夜のラインゲート。



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