2017
12.16

月のライン 3-3

Category: 小説


夜中のひっそりとしたラウンジで、子供を泣かせているところを見られたら、
変に誤解されてしまうだろうな、とラジは思った。

幸い、2人以外には誰もいない。それでも、明々と灯るランプの光が、キトの頬を光らせた。

いつマリが帰ってくるか分からないので、ラジは要点だけを実直に語った。

マリの尾行をし、着いたのは畑。幻想花の栽培地。

ラジは声を知られているので、町を歩いていたバックパッカーを買った。

マリに向かってこう言え、と教えた。

彼は自分でも何を言っているか分からなかっただろうが、よくやってくれた。

謝礼に、モンフルールの離れた裏通りに建つ、小さなホテルを紹介してやった。

この金で泊まれ、と、たしょう多額の紙幣を渡して。

そのあとマリを追いかけて、町役場へ来たラジは、
役場の受付でマリを案内する職員の声を聞いた。

「ああ、こんばんは、マリさん。奥の応接間でお待ちください。すぐ町長をお呼びしますね」

それからラジはホテルに帰った。

これだけの証拠をつかめたのは、幸いだった。

あとは町長を狙い、吐かせればいい。

「ありがとう、ラジ。マリを変な花から引き離してくれて」

涙を拭いながら、キトはお礼を言った。

「いつから、お祖母さまが怪しいと思っていたの?」

「月曜の朝に、臭うんですよ。洗ったあとの、薄れた匂いが。
 嗅いだことのある人間にしか、分からない花の香りです」

「嗅いだことのある……? ラジ、あなたはいったい……」

そのとき、ラジは椅子から立った。

「いったん本土に戻ります。明日の朝、フェリーの中で捜してみるつもりです。
 すぐに届けさせるようにと、言いましたからね。目に見えませんが、分かるはずです」

「ラジ、分かったよ。あなたは警察官なんでしょう」

キトも立ち上がり、不安そうにラジを見上げる。

ラジは少し笑ってやった。

「いいえ、違います。じつは、組織の一員でした。
 牢獄との交換条件に、インタビューに答えたり、
 こうしてデラを追っていたりしているんです。
 本土で嗅いだ香りをつけたら、この島にやってきました。
 それから、あなたのお祖母さまを嗅ぎ付けて……でもこのことは、内緒ですよ」

キトはまっすぐな瞳で頷いた。

「お祖母さまに近付くために、僕のボディーガードとして、雇われたんだね?」

この坊やは賢いな、とラジは思った。

マリ自身のボディーガードになっては、
マリは警戒して思うように動いてくれなかっただろう。

そのために、キトを利用した。

突然のことで、まだよく分かっていないかもしれないが、彼はほっとした顔をしている。

だが、まだ、まだだ。事件には、動機がいる。

この町の町長が巻き込まれた理由も、キト、きみのお祖母さまがさせられているそのわけも、
俺がこれから、あばいてみせよう。

幻想花のラインを消して、世の中のために、この身をつくそう。



● NEXT → 月のライン 3-4






このエントリーをはてなブックマークに追加 follow us in feedly


にほんブログ村 小説ブログへ
関連記事


ポイントでお小遣い稼ぎ|ポイントタウン


コメント:0  Trackback:0
back-to-top