2017
12.04

教えてくれ

Category: 小説


 ある日私は、通り行く人たちが、私のことをじっと見ていることに気づいた。

 それはまるで、何か得体の知れないものでも見るかのように、恐ろしそうに、脅えていた。

 ふと視線が合うと、すぐに目を逸らすのだ。

 子供たちは私を指差して驚き、笑い出す子もいた。

 私は何だか不気味に思った。

 私の顔に何かついているのだろうか、そう思い、不意に取り出した鏡を見てみたが、いつもと変わらない姿がそこにはあった。

 どこへ行っても、人々の寄せる視線。


 私はついに耐えられなくなり、ぞっと青い顔で私を見る、ひとりの青年に尋ねた。

 青年はびくびくしながらも、しっかりと私を見つめた。

「失礼だが、私の顔に何かついているか?」

 しかし青年は、

「いや、僕の口からはとても言えません……」

 と、教えてはくれなかった。


 いったい、どういうことなのだろうか。

 私は不思議でならなかった。

 何人か他の人に尋ねてみたが、皆同じ答えだった。

 中には私が近寄っただけで、逃げていく人もいた。


 誰か、教えてくれ。

 私は気が狂いそうになった。



 ついに私は、どうしても真相が知りたくなり、ビルの屋上へのぼった。

 人々はざわめいた。

 私は人々に向けて叫んだ。

「いったい、私がどうしたというのだ!! 誰か教えてくれ!! でないと私は、ここから飛び降りるぞ!」

「やめろ! そんなことをしても、何にもならないぞ!」

 人々は決して教えようとはしなかった。

 とうとう私は飛び降りた。



 死んでからというもの、生前の人々の様子が、いまだ忘れられなかった。

 私は「教えてくれ……教えてくれ……」と、生きていた頃の自分につきまとい、必死に答えを探した。


「誰か……教えてくれ……」



◆ E N D






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