2018
04.18

稲妻トリップ 7 十年前

Category: 小説


 遠い旅の途中です、と彼らは言った。

 名もなき楽団です、と、初めはそう言っていた。

 こんな海まで、ようこそ。お疲れでしょう、お茶でもどうですかな?

 と、パパが言って、彼らを自宅の工場内へと招いた。それがきっかけだった。

 パパは自称・発明家で、娘の私から見ても、少し変わり者だった。

 工場内では、大きな機械のモーター音。フル回転の換気扇。

 私とパパは、そんな工場の一室で眠った。夜は機械を止めて、波の音を聞きながら寝た。

 でも、工場の奥には、たくさんの時計を飾った部屋があった。

 そこでは全部の針をズラしていたため、いつもカチカチうるさかった。

 パパは、楽器を持たない楽団に、親切すぎた。

 この部屋は、過去と未来を自由に行き来するための研究室なんです、と彼らに教えた。

 妻は、病気で亡くなりました。僕は、過去へ行き、妻を助けるために、タイムマシンを作りたいのです。

「我々は、人類の生まれる前へ、ゆきたいのだ」

 彼らはパパに詰め寄った。

「我々、人間どもは、生まれてはいけない、汚らわしい生き物だった。過去へ行き、現在を変えるのだ。お前の力で」

 それから毎日、パパは夜になっても働いていた。今思えば、強制的に働かされていたのだと思う。

 私は仲良しだった、近所の男の子の家で、寝泊まりすることになった。それはリュウくんの家だった。

 リュウくんのパパは漁師で、いつも海の船の上。リュウくんのママはそのお手伝いで、昼間は家にいなかった。

 私とリュウくんは浅瀬で遊んだ。小魚やカニが動いているのを見たり、キレイな貝がらを採ったりして過ごした。

 その日は、海が荒れていた。

 楽団たち……いや、その宗教団体は、高波に飲まれそうな工場から避難していて、朝から姿を現さなかった。

 パパは時計の部屋で、一人で何かをしていた、と思う。

 私はリュウくんと貝の取り合いになっていた。子供だったから仕方ないと思うけど、それはとってもキレイだったの。

 リュウくんがくれなかったので、私はパパに言いつけてやろうと……? そうだ、慰めてもらおうと思って、一人で工場に帰ったんだ。

 パパの時計の部屋に行くまで、大きな機械のある場所を通る。

 外の嵐の風にも負けず、機械がすごい音を出して動いていた。

 機械から伸びた先端に、雷のように光るものが、キラキラと発生していた。

 私はそれに両手を伸ばした。どうしてだろう。恐怖よりも、好奇心のほうが勝ってしまった。

 熱いよ、パパ。体が痺れて動かないの……。

 パパは、私を抱えて病院へ走る。

 橋を渡ってすぐの街で、向かってきていた彼らに会った。

 そのあとのことを、私はもう覚えていない。

 私はリュウくんの家で育てられ、リュウくんと本当の兄弟のように暮らした。

 大人になった今でも、シェアハウスをするくらい仲がいい。

 テレビから流れる朝のニュースを、私はそのリュウと一緒に、アパートで見ていた。

 彼らが捕まったという知らせを聞きながら、それでも私は、心が晴れなかったのはきっと、パパがどこへ行ったのか、誰も教えてくれないと、すでに知っているからなのだろう。

 それはもう、十年も前に起きたこと……。



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