2017
11.27

脱獄

Category: 小説


目が覚めると、いつの間にか新人がやって来ていた。

「やぁ、おはよう。初めまして」

「初めまして。ところで……ここはどこだい?」

「ここは監獄だよ。入れられた者は、二度と外には出られない」

「そんなぁ……」

「ほら、あそこに机と椅子が見えるだろう?
 看守がいてね、そいつが夜になると、決まってそこに座るんだ。
 そして僕らを、オリごしに眺める。何か、晩ご飯を持参して来るよ」

「僕たちのご飯はいつだい?」

「何のん気なこと言ってるんだ。
 そりゃ、しばらくはマズいメシを与えられるだろうが、僕らこそ、いつかは看守のメシになるんだ」

「えっ!?」

「僕の前にいた、古株の子の話だが、そいつは看守がこの牢から連れ去ってしまったきり、もう戻って来ない。
 その古株が言ってたが、昔からずっと、入れ代わり立ち代り、一人ずつこの牢に入れられ、二人目を補充すると、決まって一人連れ出されるんだ。
 そして僕が見たかぎりでは、おそらく古株は、看守の晩ご飯になったんだ。
 古株がいなくなったすぐ後、看守はそいつによく似た肉を、あそこの机で食べていたよ」

「それじゃあ、もうすぐ、きみは……」

「そう、看守の晩ご飯さ。だが僕はあきらめない!
 看守がオリを開けた時、すきをついて脱獄してやるよ!」

「うん、がんばって! 僕もきっとそうするよ!」

そして、ついにその時が来た。



夜になり、おじさんはいつものように、コンビニで買って来たビールとツマミを机に置き、椅子に座って、彼らを眺めた。

彼らはいつになくバタバタしていた。

「おい、うるさいぞ」

おじさんは様子を見に、彼らのオリに近付いた。

そしてついに、オリの扉を引き開け、彼らの一人を手でつまみ出した。

その時だった。

手の中の彼が大暴れして、宙を舞った。

驚いたおじさんは、もう一人が逃げ出さないよう、急いでオリの戸を閉めた。

「さようなら、きみ!」

と、飛び出した彼は、オリの中の新人に言った。

「元気でな!」

そして開いていた窓から、外へ飛び去って行ってしまった。

「あぁ、ちくしょう!」

おじさんは仕方なく、また席に着き、ビールを飲んだ。

「あぁ、ちくしょう。また逃がしちまった。
 そういえば前も、逃がしたことがあったっけ。
 ちょっと撫でようとしただけなのに、あぁ、オレ、鳥に嫌われてるのかな……」

そして、おじさんはツマミに買って来ていた、焼き鳥を食べ始めた。

それを見ていた、鳥カゴの中の一羽の鳥は、ますます騒がしい声を上げた。

「ピギャー、ピギャー!」

「ああ、分かったよ。一羽じゃ淋しいもんな。
 もう一羽、お前に友達を連れて来るよ。
 それでいいだろ?」



◆ E N D






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