2017
11.28

ドッキリ大作戦!

Category: 小説


 お笑いピン芸人の鈴木は、最近、悩んでいた。

 自分のギャグがヒットしなくなったのだ。

 しかも、新人の芸人がどんどん出てくる。

 若手に客を持っていかれ、TV出演もほとんどなくなってしまった。


 最近では、山田とかいう二十歳そこそこのピン芸人が、ブームらしい。

 お笑いのくせにルックスもよく、女子のファンも多い。

 下積み時代も浅く、芸歴十年の鈴木にとっては、とんでもない強敵となった。


 バラエティ番組のプロデューサーは、そこに目をつけた。

 鈴木のむしゃくしゃした気持ちを察してか、または山田ブームにあやかろうとしたのか、とにかくゴールデンタイムのワクに、二人を抜擢した。

 よくある『ドッキリ大作戦』だった。

 売れてテングになっている若手の山田に、さまざまな困難をぶつけてゆく。

 仕掛け人は、彼を敵視している鈴木。

 山田には内緒で、さっそくプロデューサーと鈴木のもくろみは始まっていった。



 夜八時からの一時間、毎週放送されるお笑い番組。

 プロデューサーは視聴率を上げるため、何週分かに分けて撮影することにした。

 ラストのネタばらしの回には、そうとうの数字がとれるに違いない。

 みんな期待してくれるだろう。

 まず今週分に、小さなドッキリから仕掛けていくことにした。



 鈴木と山田が、ニセ番組『フレッシャーズ』という、最新グルメを紹介するコーナーの打ち合わせで、初の顔合わせをする。

 もちろん、壁に小型の監視カメラを仕込んでいる。

 それでは、今週放送された分を見ていこう。


山田「おはようございまーす」

鈴木「おー、山田。よろしくな。しかしアレだな。この『フレッシャーズ』っていうのは、お前にピッタリの名前だな。まさに今が旬、フレッシュ山田だろ?」

山田「なに言ってるんですか、先輩。フレッシャーズ、ですよ、ズ。先輩も入ってるんですよ。これからコンビじゃないですか」

鈴木「オレはボケもツッコミも一人でこなしてんだ、相方はいらねーよ」

山田「…………」

 ちょっと黙り込む山田に、さらに鈴木が追い打ちをかける。

鈴木「そういや、こないだ雑誌に載ってたじゃん。お笑いタレントの中の、イケメン・ランキングに、堂々の一位だ。すげーよな、山田。昔っから、そんなモテてたの?」

山田「いやいや。モテたいから、この業界に入ったようなもんですよ。僕の田舎じゃ、誰も興味持ってくれなかったんで」

鈴木「えっ!? そのルックスで!?」

山田「まぁ、いじめられっ子だったんですよね。運がないっていうか。今やっと、陽の光を見たって感じなんですよ」

鈴木「そっかー。でもいいよ、顔がよけりゃ、ウデなんざ二の次だ。大して面白くないネタでも、山田がやるから、笑いをとれる。やっぱお前、さすがだわ」

山田「…………」

 視聴者は、この気まずい山田の表情に釘付けだ。



 続いて、二週目に入った。

 レストランの一角で、最新グルメを食べるロケ。

 鈴木と山田の前に、それぞれおいしそうなカレーが出された。

 が、見るからにして山田の方は、色が赤い。

山田「お、おいしそうですねー」

鈴木「お前、ちょっと食べて、うまいコメントとか言ってみろよ」

山田「あ、はい。…………あれ、辛いっ、あ、いや、えっと……す、スパイシーですね!」

鈴木「山田、そんなに水飲むんじゃねーよ、失礼だろが」

山田「げほっ、げほっ、だって……」

鈴木「きたねーなー」

 ここでニセのカットがかかった。

 山田の食べ方がNGだったのか、このあと、何回も山田は激辛カレーを食べさせられた。

 のどが炎症して、山田は声が出にくくなってしまった。

鈴木「何しゃべってるのか聞こえねーよー」

 山田の慌てふためく姿に、視聴率も右肩上がりとなった。


 が、山田にとっては、本当につらい撮影だった。

 翌日、生放送のお笑いライブで、山田は声が出ず、ステージで一人、大恥をかいた。

 会場に詰め合わせた、たくさんの客の視線が痛い。

 が、それ以上にのどが痛い。

 しかし、そんな言いわけなど通じない。

 山田は肩を落として、家路についた。


 マネージャーの許可を得て、山田の家にも、隠しカメラがついている。

 そうとは知らずに、山田は泣いた。

 今日のライブをしくじった後悔の念で、ずっと昔、いじめられていた頃のように、涙を流して眠りについた。


 プロデューサーの配慮で、この時のVTRはお蔵入りとなり、放送を禁止した。

 が、鈴木の作戦はまだまだ続く。

 『フレッシャーズ』のロケ、番外編で、ペット用のエサ最新売り上げベスト3を食べさせたり、今売れているベテラン俳優のお弁当を食べて叱られたり、地味な仕掛けでは、道を歩いていると、通行人から「おもしろくねーんだよ!」といきなり罵倒されたり。

 かなりリアルなドッキリなので、山田にとっては、一つひとつがこたえていった。



 ある週のゴールデンタイム。

 突如、番組を変更して、速報が入った。

 テロップには、『人気お笑いタレント、山田さん逝く』と流されていた。

 アナウンサーがニュースを読む。

「山田さんが残した遺書には、『やっぱり僕はついてなかった、ごめんなさい』という一言が記されていて、山田さんは最近、まわりの友人にも、自分は呪われている、と悩んでいたことが分かりました……」


 落ち込んでいるプロデューサーの元に、鈴木がやってきて言った。

「ドッキリ、失敗しちゃいましたね……。でも、今度こそは成功させましょう! 僕、もっと面白いネタ思いついたんですよ! 次のターゲットは誰にしましょうか、今、のりにのっているピン芸人なんて、どうでしょう?」

 鈴木の顔は、明るい笑いで満ちていた。

 これで一人、若手を潰せた。

 鈴木にとっては、この企画は大いに大成功なのだった。



◆ E N D






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