2017
11.23

moth

Category: 小説


 子は、小さな頃から母に聞いていた。

 私たちは、光の方向へ進んで生きているの。

 光がなくては生きられないのよ。


 子は最近、強烈な光を見つけ、何度もそこへ向かおうと考えていた。

 でもね……と母。

 強すぎる光は、その分刺激的よ。

 でも、命を落としてもしまうのよ。

 あなたの父は、光に長く当たりすぎたのね。

 最後にはビリビリになって、体を溶かしてしまったのよ。



 子は疑問に思う。

 ぼくらは、光を夢見ることを忘れない。

 光がそこにあれば、照らされに行く。

 これは本能的に、大昔から遺伝されている行為なんだ。

 光、なんてまばゆく美しいものだ。

 なぜぼくらを魅了し続けるのか。



 子は、友に連れ立って出かけた。

 びっくりするぜ、今までになくあたたかい光なんだ。

 こっちだ、ついてこい。

 目にもくらむ強烈な光だ。

 そして、彼と子は、どちらがより光に近づけるか、という遊びを始めていた。



 悪いウワサを聞いて、母は不安になった。

 若いときは誰でもそうだけど、やりすぎの限度を知らないのね。

 あの光は、あの子の身を滅ぼすわ。


 お母さん、ぼくは突き止めてみたいんです、とあるとき、子は言った。

 ぼくは自分の命なんて、それ程大したものなんかじゃないと思っています。

 ぼくのために心配しないで下さい。

 ぼくにはぼくの幸せが、あの光の中に待っているような気がするのです……。

 ぼくは幸せを見つけに行きます。止めないで、お母さん……。



 子は体に、小さな火傷をいくつも負っていた。

 友は怖くなって、もうやめていた。

 おれはあの光は、とても不気味だと感じ始めた。

 おれは降りるぜ。

 あの光に振り回されてちゃ、そのうち死んじまう。

 あの熱さは異常だ。


 子は、友に聞いた。

 なあ、あの光が何というものか、知っているか。

 さあな……。

 友は言う。

 ただ、ずっと前からある。そいつはいつ現れるかも分からねぇ。

 ある日、見たことあるんだ。

 おれが木の下にいると、天が裂けて現れた。

 そう、暗い空が、突然光とともに裂けたんだ。

 そして、高かった木は、一瞬にして光一色になった。

 おれは怖くなってすぐ逃げだしたが、木は赤々と、雨が降るまで光を放っていたんだ。

 でも、とても……美しかった。



 子は強烈な光の側で、父のことを思った。

 父は何を求めていたのだろう。

 ぼくは何を求めているのだろう。

 この虚しい世界で、どうしようもなく、ぼくは、どこへ行けばいいんだろう。

 何を目指して生きてゆくのか。



 光は眩しく子を照らした。

 なんて熱い光なんだ。

 心を煮えたぎる情熱のように、ぼくを誘う。

 どこへ連れて行こうとするの。

 そこには、父も待っているのだろうか。

 光の中に、ぼくが求める何かがあるの。

 光はそれとも、ぼくを必要としているのかもしれない。


 子は光の中へ飛び込んだ。

 体が燃えていた。

 それは子の体を溶かし、焦がし、灰にしていった。


 一瞬のようで、時間は永遠だった。


 子は幸せを感じたのかもしれない。

 しかし、何事もなかったように、炎は燃えていた。



◆ E N D






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