2017
12.19

月のライン 6-4

Category: 小説


 ナヤがキトにこの手紙を見せることを、ラジは悟っていたのだろう。

 キトなら、ナヤを支えてくれる、と分かっていて、セドにこんな手紙を書かせたのかもしれなかった。

 そのため、マリのことを記していない。

 ナヤがキトに打ち明けられるように、セドに、マリのことを言わなかったのだ。

「ナヤ、大丈夫」

 キトは手紙をナヤに返しながら、しっかりとした声で言った。

「このことについてはラジに任せて。町長は、ラジが調べに来てくれる。きみから調べに行こうなんて、考えちゃダメだよ」

「どうして、キト。ラジって誰なの?」

「ラジは僕の……」

 言いかけて、言葉につまった。

 僕の、ボディーガード?

 キトは努めて明るい顔をし、ナヤに続けた。

「ラジは僕の友達だ。ねえ、それよりナヤ。今度のノエルの夜に、ナヤを誘いに来てもいいかな。一緒に町を歩いたり、夜のゴンドラに乗ったりしようよ」

 ナヤの目が心なしか潤んでいるような気がした。

 キトはポケットからハンカチを取り出そうとして、手を止めた。ロイに預けたままだった。

 ナヤは奥の間へ行ってしまった。

 あっ、と思って追いかけようとしたら、すぐ戻ってきた。

 手に細いペンを持っている。

「ありがとう、キト。約束ね。兄さんにも、ノエルの夜は大丈夫だ、キトがいるからって、書いておくね」

 セドからの手紙を握りしめ、ナヤは明るくふるまった。

 そんなナヤを前にして、キトは自分の頬が、熱くなっていくのを感じていた。



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