2017
11.08

ひよこ触れ合いデー

Category: 小説


「ねぇ、お母さん」

「なぁに、ぴよちゃん」

「またあのおじさんが来て、わたしを連れてゆくのよ」

「そうね。でもぴよちゃんだけじゃないでしょ、みんなもでしょ?」

「うん、そう。たくさんのぴよを、大きなサクに入れて、それからたくさんの子供達が来て、追いかけるの」

「それはぴよちゃん達がカワイイからよ」

「でもとっても怖いよう。お母さん、今日はサクの側にいて、ぴよちゃん達を見ててね」

「わかった、わかった。あっ、ほらぴよちゃん。今日もあのおじさんが来たわよ。いってらっしゃーい」

「ぴよぴよぴよ」

「やあ、みんな! 今日も元気かな? さあ、こっちへ集まるんだ。『子供達ひよこ触れ合いデー』が始まるよ。お母さん達は、ほら、このエサでも食べてタマゴでも産んでなさい」

「コケーッ、コッコッコ」

「あっ、お母さんどこへゆくの。ぴよちゃんを見ててよー!」

「見てるわよ、ほらね」

「うそ、見てないじゃない」

「見てるってば。あー、美味しいわねぇ」

「もう、お母さんたら」



「さあ、子供達、ひよこを優しく触ろうね!」

「わーい」

「わー、かわいいー!」

「ちっちゃーい!」

「ぴよぴよ鳴いてるー!」

「あ、こら待てー」

「わー、ふわふわしててかわいーよー」

「あたしにも触らせてー! わー」

「えーん、お母さーん!」

「あら、どうしたのぴよちゃん」

「えーん、人間の子供達が、ぴよちゃんをふかふかするよー!」

「まあ、抱っこされてて、いいわねーぴよちゃん」

「えーん、怖いよー、えーん」

「もう、ぴよちゃん。そんなに泣かないの! お姉ちゃんでしょ!」

「えっ、お母さん、またタマゴ産んだの?」

「お母さん、いくらだって産むわよ、コケッ!」

「あっ、タマゴだ! わーい、わーい」

「あっ、タマゴだ」

「あっ、おじさん! それはうちの子……」

「今日はタマゴかけご飯だな」

「えっ、待ってくださいな、おじさん!」

「ひよこもそろそろ、貰い手を探さないとなぁ」

「あらま、ぴよちゃん! もうお嫁に行くの?」

「えーん、イヤだよー!」



「ねえ、おじさん」

「何だい、たろうくん?」

「あのね、はなこちゃんが、ひよこのハネをむしってるよ」

「えっ! それは困るな! はなこちゃん、やめなさい」

「おじさん、はなこちゃんはあっちだよ」

「あ、そうかい? はなこちゃん、はなこちゃん」

「あっ、お母さーん、助けてー!」

「どうしたのぴよちゃん!」

「人間の女の子が来るよー!」

「はなこちゃん、やめなさい」

「キャー!」

「ぴ……ぴよちゃん!」

「……あーあ、はなこちゃん。ひよこを踏んじゃいけないな」

「はなこちゃん、いけないんだー」

「あー、はなこちゃん、どうしたのー?」

「えー? ひよこさんかわいそー」

「かわいそー」

「ねー!」

「ねえ、みんな、おじさんの所に集まって!」

「なに、おじさん」

「なに?」

「このひよこさんをこんな風にしちゃ、いけないよ。みんな、よく覚えておくんだよ。ひよこは優しく触ろうね! わかったかい?」

「うん! わかった!」

「はーい!」

「よし、じゃあ戻っていいよ!」

「わーい」

「わーい」

「さてと……今日はタマゴかけご飯と、雛鳥の肉の夕食か。また定番メニューになってしまったな」



◆ E N D






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