2017
11.18

尾探しヘビー

Category: 小説


大きなヘビが現れた。

地面の中から現れた。


はじめ、体長2メートル程だったが、動物園のオリの中で、徐々に伸びだした。

すぐ、オリはいっぱいになり、ヘビは別の場所に移されることとなった。



郵送トラックに詰まれたケージ内で、ヘビは頭に麻袋を被され、自分がどこへゆくのか分からないまま、静かな眠りについていた。

寝る子はよく育った。

運転手がケージを見た時、ケージははち切れんばかりに歪み、ヘビの皮膚をくい込ませていた。

慌てた運転手がケージを開けたのがいけなかった。

ヘビはやっと開放されたと、スルリと逃げ出し、道路を波の字に這って行った。

麻袋はそのままなので、ヘビは自分がどこへ進んでいるのか分からなかった。



ヘビはその間にも成長をやめず伸び続けた。

それに伴い太ったので、頭の麻袋がはち切れた。

細胞が増殖を繰り返し、何度か脱皮をした。

目に入るものを全て飲み込んで栄養をつけ、どんどんと、限りなく長く伸び続ける。

そのうち、ヘビは自分のしっぽを見失った。

ヘビの目的は自分のしっぽを探すことに変わった。



右往左往しているうちに、ヘビは住宅街へ踏み込んだ。

目撃者はこう語る。

「幅は人間くらいあった。奴が去った今でも、胴体が移動しきれず残っている。ほら、そこかしこに」

ヘビの体が伸びるので、住宅街の道という道は全て胴体で生めつくされてしまっていた。

人々はその体の上を歩いてゆく。

たまにうねうね動くので、気をつけて歩くのだ。



機動隊が出動した。

人々を危険に晒すので、体を切断しようとしたが、動物愛護の団体が動いたので、迂闊に手を出せない状況となった。

「ヘビは、自分のしっぽを探している」

と、騒ぎの間からひとりのヘビ使いが現れて言った。

「ヘビは、重い人生を抱えて生きていかなければならない」

それを聞いた人々は、ヘビの名を“尾探しヘビー”と呼んだ。

重いとヘビをかけたのだ。

このヘビーなヘビは、世界中の注目を集めた。


学者が揃ってヘビの生態を調査した。

そこらへんに伸びている胴体から皮膚を採取したり、血液を取ったりして調べた。

しかし、ヘビはヘビだった。



ヘビ使いが、人々の前に出て、こう提案した。

「一緒に探してあげてはどうだろうか」

人々はヘビの身体を辿って歩いた。

上空からヘリでの追跡も行われた。

が、しっぽはどこにも見つからない。

このままじゃヘビがかわいそうだ。

動物愛護団体も、このまま見過ごしているなんて残酷なことだ、と言った。

みんなの意見が一致したので、ヘビは安楽死という方法を試されることになった。



ヘビ使いが、

「ヘビにはしっぽが見つかったと嘘でもついて安心させてやりたい」

と言ったので、人々は人工的に作ったヘビのしっぽを、ヘビの頭の元へ、みんなで運んだ。

「ほら、尾探しヘビー。お前のしっぽだぞ」

ヘビ使いがヘビに、ヘビ語で呼びかけると、しっぽを見たヘビは嬉しそうに舌をペロペロ出して喜んだ。

しっぽをエサにつりながら、人々は特別に用意した安楽死用毒ガス室へ、ヘビの頭を誘導した。

そして胴体があるので完全には閉まらないが、とにかくガス室へ頭を閉じ込めることに成功した。

外から毒ガスを注入した。

ヘビの意識は朦朧となるが、なかなか大きいので、効果が効かない。

通常の何百、何千倍という毒ガスが噴射され、ヘビもそろそろ力尽きるかと思われた。

が、甘かった。


ヘビは成長を続けすぎた。

ガス室の壁が、亀裂をなし、破壊された。

充満していた強度のガスが、その周辺にいた人々へふりかかり、多くの息の根を止めた。

ヘビは朦朧としながら、伸び続け、そしてとぐろを巻きだした。

高く、高く巻き続け、ついには天高く伸びる竜のようになった。



狭かった地球を飛び出し、宇宙に進出したヘビは、遠くの方から、自分の本当のしっぽが伸びてくるのが見えた。

しっぽは宇宙の中にあった。

めぐり合えたしっぽをくわえ、巨大な輪になって、ヘビは宇宙を漂った。


それから、ある惑星に到着した。

その星に住んでいた人は、空から何か小さなリングが落ちてくることに気づき、手を伸ばした。

一人の手のひらの中に、ヘビはちょこんと着地した。

ヘビは、この星は広そうだぞ、とでも思ったのか、元気に這い出した。

そして、森へ向かい地面に潜ると、冬眠を始めた。

また目が覚めたら、再び移動。

ヘビは自分のヘビーな人生を知っていた。

ただ悲しいのは、自分のしっぽと、あと何度でも離れ離れになってしまうということだった。



◆ E N D




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